2026 年3月23日
【レポート】炎重工株式会社を訪問しました(ADvance Campus 冬合宿 DAY 1)

株式会社LINOA(本社:東京都新宿区、代表取締役社長CEO:立崎乃衣)は、2025年12月に中高生・大学生を対象としたADvance Campus 冬合宿を実施しました。本合宿は、研究や活動に取り組む生徒たちがそれぞれの活動や興味分野の枠を越えて集い、「動きながら、つながり直す」ことを目的に企画された1泊2日のプログラムです。DAY 1は株式会社グローカリンクの協力のもと、企業や研究現場の見学を通じて、最先端の技術や研究者の思考に触れ、自身の探究を社会と結びつけて捉え直す場を企画しました。このページでは、合宿内で訪問させていただいた炎重工株式会社での体験をご紹介します。
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炎重工株式会社(本社:岩手県滝沢市、代表取締役:古澤洋将氏)は、水上ドローン(USV/ASV)の開発・製造・販売を手がける企業です。創業者である古澤氏は、筑波大学でロボット工学を学び、大学院修了後には筑波大学発ベンチャーであるサイバーダインにて電装系エンジニアとして勤務。その後、東日本大震災を契機に地元・岩手へ戻り、「新しい産業を通じて復興と雇用創出を実現する」という思いから2016年に起業されました。
本社のある岩手では開発・製造を担い、量産モデルについては岩手県内や東北の協力工場と連携。東京拠点では開発・営業を担当するという体制です。今回は東京拠点にお邪魔させていただいたのですが、特に印象的だったのは、東京海洋大学内に拠点を構えている点でした。船の自動運転分野の第一人者である清水先生との共同研究をきっかけに入居し、開発した機体をすぐにテストできる環境を整えているとのこと。「研究と現場が直結している」開発体制は、まさに実装志向の企業の姿でした。
今回見せていただいたのは、超小型水上ドローン Swimmy Eye。水面を滑るように進み、搭載されたカメラで橋梁の裏側や下水道管内部の状態を確認します。飛行ドローンでは安全機能の制約上、水面ギリギリまで近づけないことがありますが、水上ドローンであればその“死角”を補うことができます。用途は主に、橋梁下の点検・下水道管の水面付近の劣化確認・河川や港湾でのゴミ回収など。「高い場所は飛行ドローン、低い水面付近は水上ドローン、水中は水中ドローン」。どれが優れているかではなく、目的に応じて役割を分担するという考え方が非常に印象的でした。また、機体は転覆しても自動復元できる設計。水上だからこそ大容量バッテリーを搭載でき、安定した稼働時間を確保できる点も特徴です。
オフィスでお話を聞いた後は、実際に水上を航行している様子の見学、そしてなんと操縦体験もさせていただけるとのことで、私たちは安全説明を受け、ライフジャケットを装着して水辺へ。無線コントローラを使った操作UIは直感的で、左のバーで前後進、方向転換は前進しながら左右へ、右側でカメラ視点を操作します。最初は「風が強くて流されそうで怖い」「思ったより速い」といった声も上がりましたが、すぐに慣れ、円を描くように滑らかに旋回させるメンバーも。「かわいい」という声も上がるほど親しみやすいサイズ感ながら、その背後には約1年〜1年半の開発期間と、約20名のチームの努力があ ります。ハードウェア設計、プログラム開発、そして危険を伴う水上テスト。必ず複数人で検証を重ねてきたという話から、ロボット開発の現実的な緊張感も伝わってきました。
興味深かったのは、社会実装における課題についての話です。行政インフラの多くは、自治体が直接管理するのではなく、メンテナンス事業者へ委託されています。しかし入札仕様に「ドローン利用可」と明示されていなければ、事業者側が導入したくても実施できないケースがあるとのこと。つまり、技術があれば広がるわけではない。仕様や制度設計に働きかけることも、実装の一部なのです。ロボットを作ることと、社会に実装することは別の挑戦である。そのリアリティに、参加者一同深く頷きました。
震災を契機に地元へ戻り、「産業を創る」という選択をした創業ストーリー。大学との共同研究を軸にしながら、地域と連携し量産体制を築く仕組み。そして、インフラ点検という社会的意義の大きい分野への挑戦。今回の訪問は、「ロボットを作る」という行為が、地域、制度、雇用、社会課題とどのようにつながっていくのかを体感する時間でした。私たちの探究もまた、研究室の中だけで完結するものではありません。誰のために、どのように実装し、どのような未来を描くのか。水面を走る小さな機体は、その問いを静かに投 げかけてくれました。
(文・立崎乃衣)
【ADvance Campusとは】
ADvance Campusは、中学生から大学生までの好奇心あふれる「個」が集い、分野を越えた自由な探究活動を行う場です。
メンバーは自身の関心に基づき「アゴラ」と呼ばれるチームを組成し、専門性を追求しながら互いに知を磨き合います。
「アゴラ」とは、古代ギリシャの公共広場の名に由来し、議論・交流・創造が生まれる場を意味します。ADvance Campus内の「アゴラ」のひとつであるADvance Labでは、次世代研究者たちがそれぞれの好奇心に基づいた自主的な研究活動を支援してきました。
ADvance Campusでは、こうした「知の結晶化」が日々生まれる、次世代型の知のコミュニティを目指しています。
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